物性研究所
物性コース
2025年3月4日(火)~3月7日(金)
1. 走査トンネル顕微鏡で探るナノの世界 (理科・文科)
長谷川 幸雄 教授
課題内容
電子は通常、荷電した「粒子」と見なされますが、量子力学では、シュレディンガーの波動方程式によってその振る舞いが表されるように、「波」としての性質を示します。ここでは、原子を観察することができる顕微鏡として知られる走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、電子の波としての性質の一端を見てみましょう。具体的には、(1)原子構造の観察、(2)電子定在波の観察、(3)電子定在波の解析から電子の分散関係を描き、電子の質量の抽出、などの課題に取り組みます。
キーワード
走査トンネル顕微鏡、電子定在波、表面電子状態、分散関係
2.原子数層のシート状物質で量子現象を見てみよう(理科・文科)
井手上敏也 准教授 ・ 田中未羽子 助教
課題内容
原子層物質とは層状物質を剥離して得られる原子数個分の厚さの結晶です。2005年にガイム、ノボセロフ両博士が粘着テープを用いて黒鉛から原子層物質であるグラフェンを得たことを発端として様々な原子層物質が開拓されてきました。本課題では、実際にいくつかの層状物質を劈開して数原子層の厚さの原子層物質を得て、その量子物性を測定し理解することで、2次元物質科学研究の一端を体験します。
キーワード
グラフェン、2次元物質、顕微光学測定
研究室URL https://ideue.issp.u-tokyo.ac.jp/
3.量子スピンとエンタングルメント (理科・文科 ※但し、理科の学生と同等以上の数学・物理の予備知識要。)
押川 正毅 教授
課題内容
物質の磁性を主に司る電子スピンの量子状態は、2つの状態の重ね合わせによって表される。これは、量子計算機の構成要素となる「量子ビット」とみなすこともできる。複数のスピンが相互作用する量子スピン系の計算を通じて、「量子もつれ」(エンタングルメント)など量子情報理論でも重要な概念を体験的に学ぶ。
キーワード
量子スピン エンタングルメント 量子情報
参考図書
「数理科学」2018年6月号 「量子情報と物理学のフロンティア」 など
4.理論研究を体験:フロッケ・エンジニアリングで新現象を発見しよう!(理科・文科)
岡 隆史 教授 ・ 沼田 宙朗 助教
課題内容
「繰り返し」は「力」です。振り子が上向きに立つKapitzaの倒立振り子のように、周期的外力は直感に反する不思議な現象が起こします(=フロッケ・エンジニアリング)。
私自身、振動電場・磁場中の電子の研究をしてきましたが、本キャンプでは専門を離れ皆様と一緒に新しい現象の探索に取り組みたいです。自由に状況設定を行い、支配方程式を解いて新現象の発見を目指します。
キーワード
理論研究、非平衡物理、状態制御
5.モータータンパク質の運動を見よう! (理科・文科)
林 久美子 教授
課題内容
ヒトの体を構成する最小単位である細胞の中では、多種多様なタンパク質がダイナミックに動くことで機能を果たしていることは、あまり知られていません。栄養素のイメージが強いタンパク質ですが、細胞内で働く分子機械としての物理性質を学びます。本課題では、特に物質輸送に関連するタンパク質(キネシン)の速度を計測し、運動について考察する生物物理研究を行います。生物も物理の対象として考えてみませんか?
キーワード
生物物理、モータータンパク質、蛍光イメージング
研究室URL https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/organization/labs/hayashi_group.html
参考図書
「1分子ナノバイオ計測」(化学フロンティア)野地博行編, 化学同人, 2014.
「1分子生物学」(DOJIN BIOSCIENCE SERIES)原田慶恵, 石渡信一編, 化学同人, 2014.